どんな漫画?
今回紹介する漫画は、春場ねぎ先生による、
『戦隊大失格』です。
本作は、週刊少年マガジン(講談社)にて連載中の特撮パロディ漫画です。
2022年5月現在で単行本が5巻まで発刊されています。
キャッチコピーは、
「”正義が勝つ‟なんて誰が決めた‼?」です。
このことからもご理解いただけると思いますが、
本作は「悪役と正義」の戦いです。
春場先生
漫画を読んで春場先生は頭の良い方なのだろうな、という印象を筆者は持ちました。これは後述する作品のテーマに関することですが、よく考えられていると感じます。
春場先生は『五等分の花嫁』が代表作で、筆者は未履修なのですが興味が湧いてきました。
作風として、ご本人はラブコメが得意と語る通り上記作品は多くのファンに支持されています。
作画も丁寧で、背景の書き込みも見事ですが、なにより女性キャラクターの可愛さに定評があり、体つきがエッチです。
ご本人は、元々は能力バトル漫画を志向しておられたようで、本作は念願かなって作品化した形です。
ジャンル
特撮をパロったコメディ漫画と思わせて、実は中々ダークな設定の作品です。
広義におけるアンチヒーロー漫画でありますが、筆者の考えでは少し違います。
本作は、コンゲーム(詐欺映画)物などに代表されるケイパー・ムービー(犯罪行動映画)のように、「悪人または悪役を主役にした娯楽作品」というだけで、主人公は英雄ではありません。
よって、アンチヒーローの分類に含まれるのか判断しかねます。
アンチヒーローというなら敵役のドラゴン・キーパーこそがそれに該当すると思いますが、こちらも人格に難があり、かつ主人公側からすれば非道というだけで、反英雄とは言いきれません。
単行本5巻現在で、かなりグレーなシーンがあるとはいえ、少なくとも作中社会で悪事を働いている描写がないのです。
一昔前であれば、いわゆる理想のヒーロー像というものがありましたが、既に多くの作品によってヒーロー像が再定義され多様性を獲得している現状では、「あるまじき行為」をしたからと言ってアンチヒーローと呼べるのか?と疑問を抱きます。
ヒーローを扱った作品では「ワンパンマン」などもそうですが、主人公・サイタマも従来のヒーロー像からはかけ離れた主人公ですよね。

なにより、繰り返しになりますが主人公は悪役なので、ヒーローアンチではありますが、物語の構造上アンチヒーロー漫画には該当しないと筆者は考えます。
あらすじ(表)
13年前。突如、悪の軍団“怪人”が地上1万m上空に巨大浮遊城を率いて現れ、人類への侵略を開始した!怪人達は、不死身の再生能力を用いて人類を脅かす。そんな怪人達から人類を守るべく、“竜神戦隊ドラゴンキーパー”は不思議な力を持つ武器“神具”を用いて抗い続ける!攻める怪人!守るドラゴンキーパー!悪の軍団による世界征服の行方は……。空前絶後の戦隊アクション、開幕!!
引用:週刊少年マガジン公式サイト・戦隊大失格ページ
引用元をクリックすることで、公式サイトにて一話目を読むことが出来ます。 ↑↑↑↑
あらすじ・世界観
本作は、特撮ヒーロー物の悪役視点を描いた作品です。
日曜日の30分特撮ドラマをメタ的に描いており、作中では12年間も八百長をしています。
そう、実は既に正義と悪の地球の命運をかけた戦いは「正義」の勝利として決着しているのです。
侵略戦争は最初の一年で悪の幹部である「怪人」の全滅によって終結し、悪陣営は、正義のヒーロー「ドラゴンキーパー」達にアジト(巨大浮遊城)へ攻め入られる憂き目にあっています。
残された戦闘員らは、その時に交わした条約によって、毎週ピエロを演じ続けているのでした。
主人公は悪の戦闘員D。
彼は、毎週日曜日に行われる八百長とそれに甘んじている現状に辟易し、この状況をどうにかできないかと苦慮していました。
しかし、彼等戦闘員にはどうにもできないように思われていました。
何故なら悪側陣営が毎週やられ役に身をやつしているのは、条約の拘束力によるものではありません。
純然たる力の差による支配によって隷従を余儀なくされているのでした。
この物語は、戦闘員Dが知恵と勇気、行動力によって悪の悲願を達する奮闘劇です。
つまらない?
筆者個人の感想としては大変楽しませて頂いている作品ですが、
検索の予想ワードの上位には「つまらない」と表示されます。

その理由としては、
- 主人公に感情移入できない
- フォントが致命的に読みずらい
- アンチヒーロー物は飽きた
- 戦隊ものに対する作者の勉強不足
- 五等分の花嫁のような作品を期待していた
などがありました。
なるほど確かにと思うものもありますし、筆者自身も上記した否定意見以外にも短所や欠点をいくつか見つけています。
しかし、その上で本作はお勧めできる作品だと思っています。
本音を言えばこれらの否定意見に対して弊記事にて反論しようと思っていましたが、好みによる部分もありますし、不毛なので辞めておきます。
ただ一つだけ「主人公に感情移入できない」というものに対して考察したいと思います。
中二病
作品の否定意見の中に「主人公に共感できない」というものがあります。
それについて異論を唱えるつもりはありません。何故なら主人公の行動原理は「悪役の理屈」でありますので、共感しずらいように意図的に出来ているからです。
悪役は悪役であり、英雄ではないのです。
しかし、理解はできます。
ここでは、それについてネタバレにならない範囲で考察します。
まず結論めいたことを言いますが、本作は所謂「中二病」を扱った作品で、主人公は患った少年なのです。
中二病とは、
タレントの伊集院光さんが発祥の言葉で、中学生くらいの少年が自我の発達によって生じる背伸びや知ったかぶりの事で、思春期にありがちな言動を揶揄したネットスラングです。 時間の経過に伴い意味合いが変遷したと言われますが、現時点での着地点としては、 「身の丈に合わない壮大な設定や仰々しすぎる世界観をもった作品」や「非現実的で特別な世界観そのもの」(中二病:Wikipedia引用)となります。
→では、症例として六つ紹介されています。
以下は要約したものですが、
- 急に洋楽を聞き始める
- コーヒー(多分ブラック)を嗜み始める
- インディーズのメジャーデビューに対して古参ぶる
- やればできると思っている
- 権利を主張し始める
- 体制に不満を持つ
など、概ねこのような感じです。
これらは、主人公・戦闘員Dの人格や言動を理解する上で重要な補助線になります。
主人公・戦闘員Dの目的は「悪役の尊厳を取り戻す」こと。
上記の権利の主張(厳密には違いますが)とも符合します。
あらすじでも紹介した通り、作中では13年の時が流れています。
主人公は地球に攻めてきた時に怪人によって作られら戦闘員であり、年齢は13~14歳の少年です。
ぴったりですよね。
自分が他者と比べて特別だと思っているような言動もその年代の少年特有のモノだったりします。
かといって、浮きたくない、という心理も戦闘員Dの擬態という能力に顕れています。
作中の各種設定にも中二臭さがあり、ややもすれば懐かしさを感じる方もいらっしゃるのでは?
テーマ
筆者が考えるテーマですので、公式ではありません。悪しからず。
まず、作品のコンセプトは「特撮ヒーロードラマにおいて、悪として生まれた者が「正義」の味方という環境に身を置くとどうなるのか?」というものであり、漢代の思想家・荀子の「性悪説」を背景にしてると考えられます。
性悪説についての説明は割愛しますが、これによる戦闘員Dの「自己の獲得」こそがテーマでしょう。
中二病とは思春期特有の言動と書きましたが、これは「承認欲求」と「自己同一性」という心理から生れるものとされています。
自己同一性とは、アイデンティティのことで、自分とは何者なのかと定義することです。
「悪」という役割を持って生まれたはずの戦闘員Dが、失った尊厳を取り戻す為に、自分のアイデンティティを再定義することを目指して奮闘します。
それによって自己を獲得するのだと筆者は考察します。
そして重要なのが、悪人と悪役は違うということです。
戦闘員Dは果たしてどちらなのでしょうか?物語の展開が楽しみです
いかがでしょう?
テーマや主人公の人格を考察すると、主人公に理解を示せると思います。
そして、作品の好き嫌いは別にしても、「つまらない」と断ずることは早計だと思えるのではないでしょうか。少なくとも物語が完結してみなければ判断できませんよね。
コメント
侵略して人も殺してるのに感情移入しろって言うのが無理
設定がころころ変わるし、絵に動きがないから読みにくい
連載していいレベルに達してない