【SLAM DUNK】新作映画に向けて久しぶりにスラムダンクを読んだら面白すぎた話【漫画感想】

漫画感想

こんにちはコミックピアです。
先日、久しぶりに名作バスケット漫画『スラムダンク』を一巻から読み返しましたので、その感想記事を書きたいと思います。

どんな漫画?

SLAMDUNKといえば説明不用の名作ですので不必要とは思いますが、簡単にどのような漫画なのか説明したいと思います。

『SLAMDUNK』は、井上雄彦先生によるバスケット漫画で、

1990年から96年まで週刊少年ジャンプ(集英社)で掲載されました。

所謂ジャンプ黄金期(83年~96年)を支えた漫画であり、最終回のタイミングを鑑みるに、スラムダンクと共に黄金期は幕を閉じたと考えてもよさそうです。

ジャンプの中でも特別な漫画として位置づけられている作品で、最終回の漫画はその週の雑誌表紙を飾ることがない、事で知られるジャンプにおいて『こちら葛飾区亀有公園前派出所』と同様、最終回時に表紙を飾った漫画なのです。

その人気は30年経った今でも衰えず、多くの読者から支持されています。

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バスケ漫画の金字塔として以降のバスケ漫画やスポーツ漫画に多大な影響を与えました。

特にバスケ漫画では、必ずと言っていい程スラムダンクと比較されてしまいます。あまり褒められた事ではありませんが、スラダンがそれだけ人気があり影響力がある事の証左でしょう。

あらすじ

身長188センチの恵体をもつ主人公『桜木花道』は、中学時代は女性に告白しては袖にされを繰り返し、その数50人に達する非モテ男子でした。

桜木は、最後に振られた女性に、バスケ部に好きな男子がいる、と言われたことでバスケを逆恨みし、目の敵にするようになります。

そんな彼でしたが、湘北高校入学直後に桜木の長身に目を付けたバスケ女子『晴子さん』から「バスケットはお好きですか?」と声をかけられます。

愛らしい晴子に一目ぼれした桜木は、彼女の気を引こうと「大好きです。スポーツマンですから」と嘘をつきます。

その後なんやかんやあり、めでたくバスケ部に入部します。

桜木は、当初こそ地味な基礎練習に嫌気が差して練習をボイコットしたり、我儘で自分勝手な性格からトラブルを多発する問題児でしたが、徐々にバスケの才能を開花させていきます。

何より、部長の『赤木』ことゴリや桜木が一方的にライバル視している天才プレイヤー『流川』、美人女子マネージャー『綾子』、顧問の『安西』先生らとバスケを通じて関わる中で、次第にスポーツマンとして成長していきます。

転機になったのは、湘北のライバル校である陵南高校バスケ部との練習試合です。

そこで、『仙道』や『魚住』など倒すべき目標を見出すことで、競技スポーツの楽しさや敗けることの悔しさを知るのでした。

その後、遅れてきた男『宮城』や名言製造機『ミッチー』、シックスマン兼副部長の『木暮』先輩などアクの強いメンバーを引っさげて、夏のインターハイ出場を目指します。

メディアミクス

スラムダンクはその人気から多くのメディアミックスがあります。

当然アニメ化されており、現代の基準でも高いクオリティの作品としてファンに支持されており、4本の劇場版長編アニメも公開されています。

そして、来る2022年秋に完全オリジナル新作劇場版『スラムダンク』が公開されることが、井上先生のTwitterにて発表され、ファンを驚かせました。

同時期に公式HPも開設されました。

映画『SLAM DUNK』
アニメーション映画『SLAM DUNK スラムダンク』(タイトル未定)2022年秋公開予定。

詳しいことは現時点では何もわかってはいませんので続報を待つ構えです。

話は変わりますが、登場人物が総じて長身であることから、おそらく実写化は出来そうにありません。

そういった人気漫画の実写化に抵抗がある方は安心ですね。

あと、ゲームなどもあったようです。

感想

当然ですが、ネタバレありで感想を書きます。
キャラクターに関しても特に紹介などはしませんので悪しからず。

桜木について

さて、ようやく本題です。

久しぶりにスラムダンクを読んだ感想ですが、一番初めに思ったことは、

「桜木ってこんなムカつくやつだっけ?」でした。

桜木花道は元々不良少年ですし、無礼で怖いもの知らずな態度はある程度記憶にありましたが、ここまで酷いやつだっけ?と正直驚きました。

初対面の目上の人に対する礼儀を知らなすぎたり、怒りに任せて周りの人に頭突きをかましたりなど、非常識とか生意気を通り越してサイコパスに近い印象を受けました。

引用:©井上雄彦(著)SLAMDUNK(1)/集英社 All Rights Reserved.

筆者が歳を取るなかで会得した知見から、桜木が理不尽な暴力を多用することへの抵抗感が凄まじかったですね。(不良として向かって来た相手に拳で制裁する分には全然かまわないんですけど……)

読み返すことの弊害として、物語最終盤でスポーツマンとして成長した桜木のイメージを持ったままだと、初期の素行の悪さにビビります。

井上先生のコメディーチックな作風と、晴子さんの可愛さがなければ、正直読み返すのはつらかったですね。

先生は、連載当初はスラムダンクの方向性に苦心されておられたようで、真偽の程はわかりませんが、不良漫画へのシフトもオプションとして構想していたという噂もあります。

桜木の傍若無人は振舞いは、その顕れなのかなと思いました。

©井上雄彦(著)SLAMDUNK(10)/集英社 All Rights Reserved.

しかし、スラムダンクは紛れもない名作であり、嫌いな主人公として終わらないのが流石です。

桜木の女性に対しては謙虚で素直に振舞う姿勢は紳士的とも取れますし、初めたことを最後までやり遂げる根性など、彼の人柄に通底する魅力は案外早い段階でわかり易く描かれていましたね。

特に仲間想いな点も魅力だと感じました。

これが最初に描かれたのは、三井バスケ部襲撃事件で、鉄男と対峙した際に彼によって傷ついた部員達の名前を挙げながら、鉄男に報復するシーンです。

これによって、湘北バスケ部員からの桜木を見る目も変わったのではないでしょうか。

もう一つ有名なのは豊玉戦ですね。

豊玉のエース『南』が流川に肘で加撃した際に、桜木は誰よりも早く抗議していました。

普段は毛嫌いしている流川であっても、桜木は仲間に危害を加えられたことへの怒りを顕にしています。

この気質はチームスポーツをする上で重要な才能だと思いました。

なぜならチームの地力の底上げをすることが出来るからです。

チームの誰かが自分の為に怒ってくれるという事実は、団結を生み、信頼を育み、そしてそれは全体のムードを高めます。

良いムードだからこそ発揮できるチームプレイは土壇場での踏ん張りに関わります。

桜木が湘北のムードメーカーであることは疑いようがありませんよね。

読み進めるにつれて「あ、やっぱ桜木っていい奴かも」と思わせてくれました。

ストーリーについて

筆者が作品のストーリーについて考えるときは、いつも積み木のイメージを使います。

これは、良いストーリーとは作品全体を通してみたときに綺麗に積みあがった積み木のように不要なブロック(エピソード)がなく、1つでも引き抜くと倒れてしまうが、そもそもしっかり組みあがっているので倒れない、という感じの考えです。

要はお話に説得力を持たせる為の設定を予め描写しておくことが大事という話ですが、この考えを基にスラムダンクを考えると、不要なブロックや逆に不足が驚くほど少ないと感じます。

例えば、桜木がバスケ部入部のために、バスケットボールを磨いたり体育館にモップ掛けをして、ゴリに媚びを売るエピソードがあります。

これによって、三井襲撃事件の際に土足で体育館に入って来た不良たちが、ボールに根性焼きをすることに対して、桜木や部員達が憤ることに説得力が生まれます。

ボール根性焼きに怒った流川が三井めがけてボールを投げることで喧嘩が始まるのですが、スラムダンクには、このように展開の誘因になるブロックがあらかじめ積まれている事が多いです。

漫画家は物語の設計図(プロット)を用意してから作品を作るのだから、上記のようなことは当たり前だろ、と思う読者さんもいるでしょう。

しかし、一昔前の漫画は頻繁にテコ入れがあり、物語が予定調和に進行することは多くなかったはずです。

特にジャンプ漫画は、アンケート至上主義と云われ、読者人気に敏感でした。

編集部からの要望を反映したストーリー変更の話はよく聞きます。
有名なところでは、ドラゴンボールの格闘漫画への路線変更などが挙げられます。

そんな中でも名作と呼ばれる漫画は、大きな破綻もなく、これまでのブロックをしっかり踏まえた上で展開を描き、読み手を楽しませてくれます。

スラムダンクもその内の一つであることは間違いありません。

とはいえ、欠点というか気になる点が無い訳ではありませんでした。

©井上雄彦(著)SLAMDUNK(7/集英社All Rights Reserved.

いくつかありますが、一番気になるのは桜木軍団でしょう。

彼等だけが明らかに浮いています。

理由は明白ですね。

彼らの説明になるブロックがないからです。

なぜ桜木と仲がいいのか?
なぜ桜木のことをよく理解しているのか?
なぜあそこまで付き合いが良いのか?

など、彼らの解像度が低いために、物語全体を俯瞰した時にややノイズになっていると感じます。

水戸に関しては、元々の構想では三井ではなく彼がシューターになる予定だった、という噂もありますね。

高宮と大楠、野間の三人も、三井襲撃事件以降に徐々に素性が明かされていくはずだったのかもしれませんし、そもそも設定がなかった可能性もあります。

どちらにしても、井上先生が三井に愛着が湧いた事と神奈川MVPという実績が今後の展開に活きてくると判断され、ご破算になったのでしょう。

桜木と軍団の関係について、分かった方が物語の完成度が増した気がするので、個人的には深掘りしてほしかったです。

筆者としては、海南陵南戦の裏で安西先生が病院に搬送された時の回想シーンで、中学時代の桜木と軍団を少し絡ませてあげるだけで、印象が変わったのかなと思います。

例えば、回想で倒れたのが水戸の父親で、高校生らに集団で痛めつけられていたところを桜木が助けた(ついでに居合わせた高宮と大楠、野間も加勢した)という流れにすれば、彼らの関係は自然に思えます。

ただし、この辺りは完全に後知恵なので何とでも言えますし、深掘りしたところで蛇足になる可能性もありますが……。

山王戦について

ハイライト

積み木の喩えに戻りますが、積み木の一番上には一番目立つ特別なブロックを置きますよね。

スラムダンクにおいて、この山王戦はまさにそれです。

スラムダンクの最終回に際して、井上先生が山王戦を超える試合を描ける気がしない、と感じたのも頷けますし、先生のこの判断を筆者は全面的に支持します。

この試合には、湘北バスケ部の、ひいてはスラムダンクという漫画で描かれた全てが詰まっていますよね。

それは、「覚悟」「挑戦」「挫折」「奮励」「再起」「信頼」「不撓」「団結」そして「成長」です。

この一戦がスラムダンクの集大成のようだと感じます。

こちら↓の方の動画で湘北メンバーの視点で見た勝因と各々の味わった挫折、再起、成長がわかり易く解説されていましたので、ご紹介します。

【山王戦】大番狂わせの要因は!? 湘北5人の「気づきと変化」を徹底解説!ネタバレあり SLAM DUNK【スラムダンク】
としお / toshio【スラムダンク考察メイン】:【山王戦】大番狂わせの要因は!? 湘北5人の「気づきと変化」を徹底解説!ネタバレあり SLAM DUNK【スラムダンク】

とてもよくまとまっており、お陰様で改めて山王戦を説明する必要も感じませんので、弊記事では目先を変えた感想を述べたいと思います。

安西先生

高校バスケット界のスーパースターである山王工業に対する湘北は、ゴリラと不良三人と社会不適合者というヒール軍団です。そう、彼らはワルモノなのでした。

そんな彼らに対して、試合前夜のミーティングで、安西先生は山王工業に対する心構えを説きます。

それが「断固たる決意」。

湘北には、観客の声援が味方になってくれることは望めません。

なぜなら、観客は高校バスケット界の絶対王者山王工業の勝利を望んでいるからです。

安西先生は、そんな中で試合に臨む者の覚悟をメンバーに伝えます。

流石は名将・白髪仏(鬼)こと安西先生ですね。言葉に含蓄があります。

山王戦を改めて読み返すと、安西先生の視点を追っていくことで一層楽しめると感じました。

全国制覇の夢みて三年間ひたむきに練習に励んでいたキャプテン赤木
自分を慕って強豪校からの誘いを蹴ってまで湘北バスケ部に入部した問題児の三井と宮城
かつての教え子を超える逸材として存在感を高める超問題児の流川と桜木

安西先生の采配は、彼等への信頼があればこそ、というものが多いです。

能力に見合ったポジションと役割、その力を引き出す言葉は信頼関係があればこそです。これは、相手の性格や気持ちを慮らなければ成立しえない関係だったと思います。

ご存知の通り、安西先生には、谷沢の反発を招いてしまったというトラウマがあります。
ですので、細心の注意を払って声掛けをしたことが想像されます。

見た目ほど簡単な事ではなかったはずです。

もしかしたら、部員達のことを我が子の様に思っていたのかもしれない、と思うのはファンの妄想かもしれませんが、強くそうであってほしいと思います。

安西先生にそういった考えがなかったとしても、指導者としての心境は、我が子の成長を見守る親心に近いものだったのではないでしょうか。

山王戦における勝因の一つは、安西先生の采配であることは疑いようもありません。

安西先生は、教え子であった谷沢に対しての期待と彼に本意を伝えきれなかったことへの失意、それによって生命を失ってしまった悲しみによって、選手から距離を置いてきました。

ともすれば放任主義的な姿勢で臨んでいた安西先生。

冷静に考えれば、部の存続が危ぶまれる時期でも赤木や木暮に部内運営を任せっきりであったことや、三井がぐれている間に何のリアクションもなかったこと(これは物語の都合上しょうがないのですが)など、顧問としての役割を果たしていたか怪しいところがあります。

そんな安西先生が本格的に指揮を執り始めたのは、海南戦からだったと思います。

そして全国IH一回戦の豊玉戦、来る最強山王戦では彼の持てる戦術スキルをフル活用して挑みます。

ここまでくると、もう放任主義とか言ってられなかったのでしょう。

最強山王を打倒するために、いいえ、我らが湘北を勝利させるために再起します。

思えば「断固たる決意」とは、自身へ向けた言葉でもあったのかもしれません。

©井上雄彦(著)SLAMDUNK(25)/集英社 All Rights Reserved.

作戦

安西先生は、前夜ミーティングや試合前に宮城や三井、桜木への声掛けなどもそうですし、試合中の指示出しなどこれまで以上に緻密に作戦を練っていました。

それだけ、湘北を勝たせたかった気持ちが強かったのだと汲み取れます。

そのかいあって前半戦は2点リードで終えることが出来ました。

試合開始直後の速攻や序盤の三井の3p、桜木と河田弟の局地戦、流川の体力温存などの素早い対応が、「積み重ね」となって山王へのプレッシャーになると読んでいたからでした。

事実、後半戦を迎えた時の安西先生の独白と天の声によって、山王メンバーも立ち上がりにプレッシャーを感じていたことが示唆されています。

そして、安西先生は、メンバー達に前半戦の出来栄えとリードは「忘れよう」と伝えます。

湘北にとって、後半戦からが本当の挑戦になると考えていたのでしょう。

後半戦

それを表すように山王・沢北の速攻の3pからの伝家の宝刀ゾーンプレスと河田兄の存在によって、後半戦開始5分で20ポイント奪われます。

ここで安西先生がタイムアウトを取り、考え過ぎて足が止まっているとメンバーを鼓舞しますが、

頭に浮かんだ「敗北」の文字を振り払うのに必死なメンバーにはその声は届きません。

それが顕著だったのが赤木でした。

河田に翻弄され、責任感から自分が何とかしなければと焦り、自縄自縛に陥ってしまって冷静な判断が出来ません。

晴子さんも「赤木がこれまで積み上げてきたものが消えてしまうのでないか」と危惧しています。

しかし、この状況の突破口になると安西先生が期待したのが素人・桜木です。

会場中が山王勝利を確信する時にあって、安西先生と桜木だけが湘北の勝利を諦めていませんでした。

©井上雄彦(著)SLAMDUNK(27)/集英社 All Rights Reserved.

桜木を木暮と交代させた安西先生は、彼の役割の意味を説きます。

桜木の持つ運動能力は、作中で幾度も実力者たちから評価されてきました。

その真価が発揮されるのがリバウンドです。

ここで素晴らしいのが、多少時間をかけてでも、桜木が自ら気が付くように促すところですよね。

半分は読者への解説だったと思いますが、これによって桜木は、雑念や迷いなくリバウンドに専念することが出来るようになりました。

安西先生の隠れた好プレイです。

そして、もう一つ安西先生が桜木に期待していたことがあります。

これは、攻めの「リズム」を生むことによって、チームの「ムード」を高めることです。

桜木がムードメーカであることは先に触れましたが、これは何も心情的な話だけではありません。

山王の堂本監督に看破されていましたが、桜木のリバウンドによってもたらされる攻めのリズムは、湘北に勢いを生みます。

これにいち早く呼応したのが宮城であり、赤木、三井へと伝播しました。

そして、流川に対して挑発したことで、彼の闘争心に火が付き湘北の追い上げムードが高まります。

プロット変更?

©井上雄彦(著)SLAMDUNK(28)/集英社 All Rights Reserved.

すこし話が脱線しますが、魚住が板前に扮して赤木に発破をかけるシーンがありますね。

これは、ストーリーの変更であり、元々は予定していなかったのではないかと筆者は考えています。

その証拠に、魚住は試合会場に到着して以降手ぶらで描かれています。

単行本の幕間イラストでは、バックから衣装を取り出している様子が描かれていますが、本当に予定されていたなら、このバックは本編で描写されていたはずです。

筆者が何度見返してもバックは確認できませんでした。(見落としの可能性はあります)

実際はコマ枠に見切れているだけかもしれませんが、井上先生はバッシュの種類などを丁寧に描写することで知られていますし、その後の展開のヒントになるような会話なども予めしっかり描く方です。

バックをあえて描かなかった事で得られる物語上の効果がないように思います。

つまり書き忘れでない限りバックを描かない理由ないんですよね。

もう一つ根拠があります。
#244「HEART OF TEAM」で、湘北の魂は「赤木」なんだ、と有識者たちが口をそろえて言っています。

湘北を知る人たちは、赤木の再起と湘北の逆転を紐づけて考えていました。

そして、その前のページで、安西先生は「桜木に期待しているのはリバウンドだけではない」と綾子に吐露しています。

これは、前述した桜木のムードメーカーとしての気質について述べているのでしょうが、会話の流れとして、赤木への奮励を促す意図があったと考えるのが自然です。

しかして井上先生が、魚住の方が適任であると判断して、予定を変更したのではないでしょうか?

スラムダンクは、漫画的な誇張はあるにしても、基本的にはリアル路線で物語が進行します。

その中にあって、魚住の行動はあまりにも不自然で唐突です。

魚住が赤木を鼓舞するためにとっさに行動に起こしたこと自体は違和感のない事ですが、バックの中に包丁と大根と板前の衣装を持参していることの必然性を高める説明的な描写が一切ありません。

お叱りを恐れずあえて乱暴に言わせて頂くと、この演出はご都合主義的であり、不細工でした。

ただし、これはあくまでこのシーンに至るまでの道のりが合理的でなかったというだけで、魚住の赤木への励ましは「物語の集大成としての山王戦」に相応しいものだったと思っています。

否定的に語ってきたので、筆者がこのシーンを嫌っていると思われる読者さんも多いと思いますが、筆者はこのシーン大好きです。

何故なら、魚住の「赤木に華麗なんで言葉は似合わない、泥にまみれろ」というメッセージは、自身が体を張ってチャンスを作りることで主役になれるチームメイトの為の土台に徹するという心構えを説くもので、彼自身が湘北陵南戦で至った考えであり、赤木としのぎを削り、認め合った仲だからこそ言える最高の激励だったからです。

晴子さんが危惧していた「赤木が積み上げてきたもの」の中にも、しっかり組み込まれた魚住との神奈川№1センターを巡る争いは、土壇場で赤木を再起させます。

もし魚住がいなければ、もし魚住と試合を通じて互いを高め合っていなければ、赤木は河田の前に精神的に崩れていたでしょう。

技巧派の花形や高砂ではなく、不器用で愚直で力ずくな魚住のセリフだからこそ、赤木の心を動かせたのだと思います。

二人に共通していた思いは「チームの勝利」であり、個人の勝利ではないのですから。

©井上雄彦(著)SLAMDUNK(20)/集英社 All Rights Reserved.


聡明な読者さんはお気づきのことと思いますが、テーマは「積み重ね」です。

これまでの全てが選手たちを支えているんですよね。

だからこそ、山王戦は「スラムダンクの集大成」であり、井上先生もこれ以上は描けない、と判断されたのだと思います。


さて、本当は山王戦後半について、まだまだ語りたいことが沢山あるのですが、気が付けば1万文字を超えてしまっているので、一度筆を置こうと思います。

最後に、↓

晴子さんについて

マジで可愛い。

晴子さんは誇張抜きで本気の可愛いです。

しかも可愛いだけでなく、落ち込んだ桜木に声をかけてくれる優しさや、数字や記録に基づいて励ましてくれる理知的な面も持ち合わせています。

晴子さんの「理知的な面」は、イメージにないと思われるかもしれませんが、実はしっかり描かれているのです。

例えば、海南戦の敗戦直後に、悔しさから学校をサボる桜木に対して「桜木にとって海南戦は一生忘れられないモノになる、何故ならバスケットマン桜木が初めてダンクを決めた試合だから」とパスミスを悔やんでいたはずの桜木を直接関係ない話題で活躍を讃えます。

そして、どんな天才にもミスはある、と〆るのでした。

他にも、豊島戦後の電話でも「桜木の6得点が無ければ4点差がひっくり返っていたから湘北は負けていた」と桜木の貢献度を説明してくれます。

スポーツ漫画にありがちな「居るだけのヒロイン」ではないんですよね。晴子さんは

引用:©井上雄彦(著)SLAMDUNK(1)/集英社 All Rights Reserved.

最後に

筆者の知り合いのバスケ部出身者が「スラダン読んだことない奴は心が無いのと同じ」と流石に暴言だろ、という乱暴な感想を述べたことがありました。

そのくらいある時期に熱狂的なファンを獲得し、しかも未だに新規ファンを増やし続けている本作は、紛れもなく日本漫画史に残る名作です。

筆者は、名作の定義を「社会的に影響力があり、時代や世代を超えて批評の的になり得る傑作」としています。

傑作の定義は「同時期の漫画と比べて抜きん出て面白いと評価される作品」と捉えており、個人的な好みや流行り廃りがあるものです。

スラムダンクはそういった傑作とは一線を画す作品でしょう。

何故なら、連載当時の漫画業界にあったとされる「バスケット漫画は成功しない」というジンクスを打ち破り、作品のファンがそのままバスケ人口を増やし、スラムダンクがなければ日本からNBA選手は誕生しなかったとすら言われる程だからです。

海外の特にアジア圏にも多くのファンがおり、バスケットボールが盛んなシナでも人気です。

人気作品の常として、今後も当然のように批判の対象になり、時には否定的な意見も出てくるでしょう。

しかし、筆者は、時代の風雨にさらされながらも「バスケット文化に良好な影響を与えた名作」として、スラムダンクは読み継がれていくのだと確信しています。

筆を置くと記してからも長々と書いてしまい申し訳ありません。これでおしまいです
今度は嘘じゃないです。

拙い文章でありましたが、ここまで読んでくださり本当にありがとうございました。

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