本記事は、大人気漫画『ゴールデンカムイ』の考察記事です。

上記の記事にて登場人物のモデルを紹介する予定だったのですが、大人気キャラ「月島基」軍曹のモデルと思しき偉人を見つけることが出来なかったので、もしかしたらこの人では?という人物を何人かピックアップし、考察してみたいと思います。
月島軍曹とは
月島軍曹は、ゴールデンカムイ作中に登場する北鎮部隊こと日本帝国陸軍第七師団に所属する人物です。
第七師団の実質的な主導者である鶴見中尉の懐刀として忠実に働く有能な人物で「死神の右腕」と呼ばれます。
その一方で、エキセントリックな言動が目立つ他の面々と比べて極めて常識的かつ良識的な態度から「第七師団の良心」とも云われます。
作中屈指の暴力集団でもある第七師団の中心人物だけあって戦闘技能や能力は高く状況判断、陣頭指揮能力にも優れます。
鶴見中尉の命令で、アシㇼパ奪還の際には鯉登少尉と共に杉本一派と同行しています。
ロシア語が堪能だということもありますが、鶴見からの信頼の高さの現れでしょう。
月島軍曹がロシア語を習得するまでのバックストーリーは作中屈指の名エピソードです。
月島軍曹のバックストーリーにはとても切ないエピソードであり、彼の魅力を非常に的確に描写しているので、是非漫画本編かアニメ第三期でご確認いただきたいと思います。
モデル考察
結論から申し上げますと、月島にモデルは確認できませんでした。
本来であれば記事にするような内容ではないのかもしれませんが、読者の皆様の何かしらの役に立つかもしれませんので、集めた情報をまとめてみたいと思います。
実際の第七師団
こちらは実際の第七師団に「月島」姓の軍人がいたのではと思い確認してみましたが、少なくとも師団長格に該当者はいませんでした。
名前のニュアンスが一番近いと感じたのは「星野」中将という方がご兄弟でいらしたようでしたが、類似点は確認できませんでした。
一応日露戦争への従軍経験はあるので類似点と呼べますがその程度でモデルというには乱暴ですよね。
実際の第二師団
月島軍曹の経歴上第七師団に配属される以前は第二師団にいたので、そちらもチェック。
残念ながら師団長・参謀クラスには「月島」姓を確認できませんでした。
自衛隊の第二第七師団も確認しましたが、歴代司令官には「月島」姓を認知できず、近い名前もありませんでした。
鶴見の右腕
鶴見中尉のモデルは、第七師団二十六連隊隊長の須見新一朗大佐(名前のモデルは鶴見宜信大佐?)だと云われています。
これを考慮すると、実在に須見大佐の右腕と呼ばれた方がわかれば、すなわち月島軍曹のモデルの可能性が高そうです。
しかし残念ながら須見大佐に関する情報はあまり多くはなく、まして第七師団二十六連隊の部隊表などを確認するのは明らかに労力に見合わないので断念しました。
参考までにお伝えすると国立国会図書館のデジタルコレクションで、在籍した軍人さんの名簿は確認できるようです。興味のある読者様はご自身でご確認いただければと思います。
Wikipediaでわかる範囲で、須見大佐が活躍した「ノモンハンの戦い」を詳しく見てみると、26連隊は須見大佐を含めて三人の生存者を残して全滅してしまっています。
そしてその内一人の名前が「三嶋」と言います。
もしかしたらこの方が月島軍曹のモデルの可能性はありますが、残念ながらインターネット上でこちらの方の詳細を調べることは出来ませんでした。
そこで目先を変えて、日本人以外からも考えてみました。
テオドール・エドラー・フォン・レルヒ
スキー普及の為の指導を行うため来日したオーストリア=ハンガリー帝国の軍人です。
1911年に日本で初めてのスキー指導を行いました。その時の練習生の一人が鶴見宜信大佐でした。(史実)
鶴見宜信大佐はドイツ語が堪能だったこともあり、その後は通訳としてレルヒ大佐の補佐をしながらスキー指導を受けていたそうです。
そして翌12年には北海道旭川にて第七師団にスキー指導を行っています。
彼は、月島軍曹同様にロシア語も話せたそうです。
ここまで書いといて何ですが多分関係ないと思います。
夏候惇
インターネットで「○○の右腕」と検索して引っ掛かった三国志の夏侯惇です。
彼は、魏の曹操の右腕と呼ばれている人物で、14歳のころに学問の師匠を侮辱した男を殺害したという経歴を持ちます。中々月島ポイントの高い人物ではないでしょうか?
夏侯惇の性格は、清廉潔白で忠義に厚い人柄だったようです。しかし上記の通り激情に駆られてしまう危うさも持ち合わせてもいました。
曹操不在の際に国政を預かったりなど文官としても優れており一門の武将だったことが解ります。
そして夏侯惇は隻眼の武将として知られています。敵兵に左目を射抜かれてしまったのです。
先々月島軍曹が左目を負傷するようなことになれば、夏侯惇がモデルである可能性はグッと高まりそうです。
出身地
月島は新潟県の佐渡が出身で、この場所は実在するのでファンの間ではゴールデンカムイの聖地の一つとして有名です。

そこで、新潟県出身の軍人をチェックしてみました。
しかし残念ながら「月島」姓の方は発見できませんでした。軍人以外の著名人も検索しましたが該当者はいませんでした。
「〇島」という苗字の方は20人ほどいらっしゃいましたが、流石に一人一人チャックするには至っていません。もしかしたらその中にいらっしゃるかもしれませんが、あまりに縁遠い方であればこの際除外してもいいだろうと思い対象外とさせていただきます。
また、上でも触れましたが名前のニュアンスで近そうなのは、第九師団在籍経験のある星野庄三郎中将が唯一近いのかなあ、というくらいです。
ところでゴールデンカムイと同じく週刊ヤングジャンプで連載中の漫画『かぐや様は告らせたい』の作者でもある赤坂アカ先生も佐渡市出身だということが分りました。
まさか……と思いますが、恐らく偶然でしょう。

アニメ3期楽しみですね。
月島
そもそもこの「月島(嶋)」姓は数がすくない希少苗字で、ごく僅かな月島さんしか国内にいないそうです。これは過去を遡っても同様です。
つまりは、似た名前、例えば「築島」などの人物がモデルである可能性を除き、苗字からは元ネタを特定できないと考えられます。
しかし、実はここからが本命になるのですが、月島という地名も存在します。
それは東京都中央区にあります。
つまりその場所にゆかりのある人物は、モデルである可能性が高いと当然の帰結として導き出されるわけですね。
小説
そして、この月島地区を舞台にした小説が存在します。
筆者は当初この小説の登場人物こそが月島軍曹のモデルだろうと考えていました。
それは三島由紀夫先生の『幸福号出帆』です。
こちらの小説には「山路敏夫」という人物が登場します。
彼は、父親がイタリア人であり、その事が原因で幼少期に周囲からいじめられます。
また、母親を侮辱されたことで暴力事件も起こしています。
父親の悪い噂が原因で煙たがれ、暴力によって周囲から嫌われる構図は月島軍曹と被ります。
しかし、小説の内容自体は月島のエピソードとはあまりにかけ離れているため、この説も成り立ちそうにありませんでした。
三島由紀夫
そこで、三島由紀夫の代表作でもある『潮騒』という作品も調べてみました。
こちらは神島という実在の島をモデルにしており、佐渡の港町に近い感じがしました。
もしかすると、「月島基」のモデルは特定の誰かではなく、三島由紀夫の作品からエッセンスを抽出してオリジナルの解釈で紡がれた物語だったのかと思えてきました。
また、GKの鶴見を始め第七師団が『憂国』の志でクーデターを画策しているとすれば、月島軍曹も影響を受けているはずですので、モデルの一つと考えられるかもしれません。
三島と月島も名前が似てますね。
まとめ
先の結論で述べた通り、ここまで考察して尚も決定的な要素が欠けています。
その要素とは月島が尊属殺人を犯したという経歴です。
先にあげた三島由紀夫先生がモデルでは?とも考えて、彼の経歴を調べましたがあまり似ていませんでした。(三島先生自体は非常に考えさせられる生涯を送っています)
特に実父との関係が比較的良好な三島では月島足りえません。
ただし、先々「月島軍曹のモデルは三島由紀夫だ」と判明したとしても驚かない程度には、両者には親和性があると筆者は感じています。
それにしても尊属殺人というハードルが高すぎます。
日本で起きた尊属殺人の事件を幾つか確認してみましたが、これまで通り月島軍曹の経歴を思わせる内容は認められませんでした。
やはり、月島基にモデルをみつけることは出来なかった、という結論になります。
コメント