【漫画紹介】藤子不二雄作品『UTOPIA 最後の世界大戦』F先生とⒶ先生の共同作

どんな漫画?

今回紹介する漫画は、藤子不二雄先生によるSF漫画『UTOPIA 最後の世界大戦』です。

本作は1953年に鶴書房から刊行された漫画で、
藤本弘(F先生)と安孫子素雄(Ⓐ先生)ご両人による、最初で最後の描き下ろしの単行本です。

その時の名義は「足塚不二雄」といいました。

ジャンルはSF漫画ですが、戦争を反対する批判的な作風やデストピア化する社会への警鐘が見て取れる社会風刺色が強い作品です。

また、戦後復興への憧憬を感じる作品でもあります。

復刊版

今回筆者が読んだタイトルは、2012年に『藤子・F・不二雄大全集』にラインナップされたもので、『天使の玉ちゃん』と併録されています。

世界観

物語の100年前、かつて世界を二分したA国とS連峰という国がありました。

二国は標榜する国家主義の違いから戦争をしていました。

後に第三次世界大戦と呼ばれる戦争です。

闘いの趨勢はA国に傾き、S連峰は首都が空爆されるまで追い込まれていました。

巻き返しを狙ったS連峰は、秘密兵器「氷素爆弾」の使用を決定します。

その威力は凄まじく、人類の半分を凍結させることを引き換えに、S連峰は逆連勝利をおさめました。

氷素爆弾を開発した科学者はその威力を嘆きます。

彼は、使用を止められなかった事、そもそも作ってしまった事に悔恨の念を抱きます。

それから100年の歳月が経ちます。

人類は荒廃しましたが、科学の発展は人間を活かし続け、健康寿命は2倍以上も伸ばしていました。

贖罪の為にA国の生き残りを探していた科学者は、ついに生存者をみつけるのでした。

生存者は100年間も凍結していた少年です。

目覚めた少年は、世界を支配するS連峰の後継組織・地球国首都「ユートピア」が人類を管理する光景に絶望します。

あらすじ

主人公である少年はA国の戦争犯罪者である父親の処刑に立ち会う形で登場します。

彼の父親の罪状は明かされませんが、父親は核シェルターの実験の被検体を兼ねて処刑されることになっていました。

父親との別れが耐えきれず、衝動的にシェルターに飛び込んだ少年は父親と抱き合いながら最期を覚悟するのでした。

少年が実験の為にその命を絶たれんとした正にその時、S連峰の「氷素爆弾」が炸裂し、A国は国ごと丸々凍結してしまいました。

少年はシェルターの力で生命維持能力を保持したまま氷漬けになり、唯一の生き残りになります。

そして100年後、掘り起こされた少年は、現代世界のデストピアぶりにおののきます。

なんやかんやあってレジスタンの仲間入りを果たした少年は、妥当S連峰を誓い戦うのでした。

感想

正味な話、現代の水準で言えば決して完成度が高い作品とは言えないと思います。

特にコマ割りが悪く、コマ間での連続性が希薄で読みずらいと感じるページが多くありました。

これは、当時の漫画の技術が今ほど洗練されていなかったというより、F先生とA先生の刊行時の技術が未熟だったからだと思います。本作は両先生がデビュー前に描いた作品だそうです。

そしてSF漫画としては説明不足というか説得力不足だと感じました。児童向けの作品なので仕方がないのですが、肩透かしを食らった心持になったのが正直な感想です。

筆者の期待が大きすぎたのだと思います。

しかしテーマは現代でも議論される問題を複数織り込んだ重厚なもので考えさせられるものです。

そしてプロットもしっかり起承転結を押さえているので、ワクワク感があり、ページをめくる楽しさはあります。

総評として、作品の完成度に対して読後感は意外と悪くありませんでした。ただ物語の風呂敷のたたみ方が乱暴だったなあと思いました。

日本を代表する漫画の大家・藤子不二雄の共同作としての価値や漫画黎明期の漫画として、古典を楽しみたい方へはお勧めできると思います。

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